コミュニケーションが苦手な子どもに「特につけてあげるべき」コミュニケーション能力
人にはみな得意不得意があり、苦手なこともあって当然である。
しかし、その苦手なことが、その人の人生を脅かすほどのことにならないように教育してやるのが、親や教師の役割である。
苦手なことといっても様々だが、僕が人生を快適に送るために、特に重要だと考えているものの一つに「コミュニケーション能力」がある。
我が子や自分の担任する子ども達のことを考える時に、コミュニケーション能力の不足によって、自殺や殺人など、最悪の結果につながらないようにしてやらないといけないという思いがいつも頭の片隅にある。
それほどまでに、コミュニケーション能力というのは重要な生きる力であり、不足すると危険に直結するものである。
今回は、「コミュニケーション能力」とはそもそもどういう力なのか、そして特に「コミュニケーションが苦手な子」につけてあげるべき力について紹介する。
①コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力について語る時にまず重要なのは、その意味合いをはっきりさせておくことである。
よく巷で見聞きするものには
・面白いトークで人を楽しませる力
・聞き上手
・上手にプレゼンする力
のようなものがあるが、「コミュニケーション」とは人と意思疎通をとることである。
ということは、コミュニケーション能力とは「人と意思疎通をとる力」であり、それ以上でもそれ以下でもない。
上で挙げたような例は、広いコミュニケーション能力の中の一部になるわけである。
つまり、コミュニケーション能力と言ってもいくつか種類があるということである。
そこで、コミュニケーション能力を4つに分類してみた。
①発信(事務)
②受信(事務)
③発信(応用)
④受信(応用)
この4つである。
(事務)というのは、仕事や生活をしていく上で必要不可欠なものを指す。
(応用)というのは、人を楽しませるというような必要不可欠以上のものを指す。
②特に「コミュニケーションが苦手な子」につけてあげるべき力は?
それでは、特に「コミュニケーションが苦手な子」につけてあげるべき力はどれに当たるのだろうか。
言いかえれば、不足すると最悪の事態に直結する可能性が高いのはどれなのか。
削ぎ落として削ぎ落として考えていくと、それは①発信(事務)である。
(応用)の2つは、言葉通り応用である。
できれば人生に彩りが生まれるが、無くても最悪の事態につながる可能性は低い。
しかも、コミュニケーションが苦手な子にここを求めるのは難しいことだろう。
その2つに比べると重要度は上がるが、②受信(事務)も、軽微なミスにつながることはよくあっても、最悪の事態につながることは①に比べると格段に下がる。
さらに、いわゆる「コミュニケーションが苦手な子」でも、IQによってクリアできていることも多い。
世の中で起きている様々な「コミュニケーション能力の不足によって起きた悲劇」を分析すると、①発信(事務)の力が不足していると感じるものがほとんどである。
どうしようもなく困っているのに、誰にも相談できずに自殺してしまったとか、誰にも気持ちを分かってもらえない苦しみから無差別殺人をしてしまったとかである。
最悪の事態になる前に、自分にとって伝える必要のあることを、適切な方法で誰かに伝えられなかったということである。
さらに、どんなに(応用)の方ができていても、この①ができていないと危険ということである。
そんな人もいるのだ。たくさんの人を楽しませていた人が、実は一番大切なことは誰にも言えていなかったというような場合である。
この4つのコミュニケーション能力をバランスよくつけてあげられればそれに越したことはないのだが、絞るとすれば①である。
では、どうすれば①の力をつけてやれるか。
とにかく「発信してよかった」という経験を積ませてやることである。
どんなに言葉で「何でも言いなさい。」と言ってもらっていても、実際に発信した時に発信していない場合よりも嫌な目に遭うならば発信しなくなる。
特に「コミュニケーションが苦手な子」である。
発信すること自体に、かなりエネルギーがいるのだ。
内容がツッコみたくなることでも、まずは発信してくれたことを認めてやること。
そして、発信しないよりは、した方がいいようにしてくれるなという信頼を得ることである。
コミュニケーションが苦手な子にとって、発信することはエネルギーのいることである。「発信した方がいいな」と思ってもらうには、かなりの数が必要になるかもしれない。
それでも、経験を重ねるしかない。
支えるこちら側が、意識的にその成功経験を積ませてやるのである。
まとめ
普段普通に生活して様々な人と関わる中で、①の力は重要な役割を果たしていくだろう。
しかし、最悪の事態を想定するならば、世界に一人でも
「自分の思いを聞いてくれる人がいる。そしてその人になら言える。」
と思える人がいれば、最悪の事態を回避できる可能性はぐんと上がると思うのである。
特に親はその存在になることを目指さないといけないと思うし、教師も親に比べて格段に微力ではあるが、そこを目指さないといけない。
自分がまずそういった存在になれるように信頼を得ること、そして子どもに①の力をつけてやること。
親としても、教師としても僕がかなりの重きを置いているポイントである。