「学級じまい」で失敗しそうになった話
3学期がスタートした。
教師として、子ども達の次の学年のことを考え始める時期に入っていくと思う。
「学級じまい」
とか
「自分の色を抜く」
等という言葉も見え始める。
実は、僕はこの時期に間違ったエンジンのかけ方をして失敗しそうになったことがある。
今回は、同じような失敗をする人がないように、そのエピソードを紹介する。
その時担任していたクラスに、落ち着きのない子がいた。
3学期まで、その子の得意不得意を理解し、あれこれ試しながら何とか過ごしていた。
もちろん完璧に落ち着きのなさが改善されているわけではないが、彼を理解している担任(僕)とクラスの仲間との関係の中では、大きな問題はなく生活していける状態になっていた。
そして2月頃、僕はこう思ったのだ。
「来年はどんなクラスでどんな担任の先生になるか分からない。どんな環境でもやっていけるようにもう一度鍛え直して、次の学年に上げてやらないといけないのではないか。」
今までよりモードを上げて、これまでより厳しく指導し、少しでも落ち着きのなさを改善して次の学年に上げてやる。
それがその子のためであり、現担任の僕の責任なのではないかと思ったのだ。
その日以降、僕はその子にそれまでより厳しく当たった。
それまで作ってきた関係の中で、何となく流したり許したりしていたことも、細かく指摘し、叱る回数も増えた。
そうこうしていたある日、尊敬している先輩が話しかけてきた。
「お前のクラス、最近いつになくトゲがあるな。なんか変えた?」
と。
僕は、その時考えていること・やっていることを話した。
すると
「意味ないからやめとけ。そんなんあいつができるなら前からやってる。お前がするべきなのは、あいつに仲間をつけて次の学年に上げてやること。」
と言われた。
僕は、まさに「ハッ」とした。
子どもにとって教師は大きな存在だけど、何より大きいのは仲間。
そして僕との関係はここで終わりだけど、仲間とは一緒に学年を上がっていくわけである。
今のクラスの中で、その子の良いところ(苦手なことも)を理解して受け入れてくれる仲間を少しでも多くつけて、次の学年に上げてやることが、来年度、さらにそれ以降その子が楽しく学校生活を送っていく上で何より大切なことだと。
それに、それまであれこれとがんばってきての2月である。1ヶ月ほど特別にがんばってどうにかなるわけがない。
そうなると、担任としてすべきことは何か。
その子の良いところやがんばりをどんどん認めること。
子ども達は教師の姿をよく見ている。
教師が認めていたら、認めていいんだと感じるし、教師が否定していたら、良くないこと(子)なんだと感じる。
僕は、しなければならないことの正反対をしようとしていたわけである。
その子の行動を細かく指摘する・何度も叱る。
それは、その子のマイナスプロモーションになる。
このことは、もちろんみんなにもいつでも当てはまることだが、こういう子には、この時期少し特別でもいいくらいである。
悪い意味で目立ってしまいがちな子にとっては特に、仲間がいるかどうかは学校生活を送る上ですごく大きいことなのだ。
その後、やり方を変えるとトゲもすっと無くなった(その先輩曰く)。
危なかった。
それ以来、ずっと同じスタイルでラストスパートを過ごすようにしている。
教師は、自分のもとを離れるに当たって、色々と整えたくなるんだと思う。
しかし、子ども達は1年間、担任の言うことを信じてついてきてくれたのである。
最後の最後になって、いきなりやることを変えたり厳しくされたりしたら、今まで言ってきたことは何だったんだ?となるだろう。
さらに、「自分の色を抜く」と言う言葉も見聞きするが、次の担任がしっかりやれば、ほっといても6月にはもう次の担任のクラスになる。
妙なことをするより、しっかりと「楽しい1年間」を子ども達に経験させて、学校での成功体験を積ませてやる方が大切なことだと思う。
何なら、最後の最後に変えなければならない程度のことなら、年度始めからやらない方がいいということではないか。
自分がいいと信じることを子ども達に伝え、しっかり1年間貫いてやることで、子ども達の自信にもなると思う。
僕は、来年度をイメージできるように話はする。
新しい仲間と新しい担任。
想定されることを伝える。
でも、やることは変わらない。
改めて一人一人の良いところを見つめて返していくということを意識するくらいである。
僕が学校生活を送る中で一番身につけてほしい力は、「自分で楽しい時間をつくる力」である。
新年度こそ、その力が試される時なのだ。
やってきたことを子どもと振り返り、新年度想定されることをイメージし、その中で自分がやるべきことは何なのかを考えておく。
1年間やってきたことと同じである。
ラストスパートの3学期、教師の都合や感覚で、間違ったエンジンのかけ方をすることなく、気持ちよく子ども達を送り出せるように、今年度も過ごしていきたい。